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政務調査費 監査結果の通知(2007.06.13)

熊監発第 69 号
平成19年4月27日

請求人
 金 津 紀 代 様
 藤 本 惠 子 様
 中 山 眞 弓 様
 原田智恵子 様
 佐 々 明 生 様
 永 尾 佳 代 様

熊本市監査委員 濱 田 清 水

熊本市監査委員 舞 田 邦 彦

熊本市職員措置請求に係る監査結果について(通知)

 平成 19 年 2 月 28 日に提出された標記の請求について、地方自治法第 242 条第4項の規定により監査した結果を下記のとおり通知します。

第1 請求の受理
  本請求は、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成 19 年 3 月 1 日
これを受理した。

第2 監査の実施
  1 監査委員の除斥
    監査委員のうち、議会選出の嶋田幾雄委員及び磯道文徳委員は、地方自治法(以下「法」という。)第 199 条の 2 の規定により、本件請求に利害関係を有するものとして除斥した。
  2 個別外部監査契約に基づく監査を実施しない理由
    請求人は、法第 252 条の 43 の規定による個別外部監査契約に基づく監査を求めているが、本請求は、個別外部監査を行うほどの専門的な知識を必要とする事案ではないと判断したので、監査委員による監査を実施した。
  3 請求の趣旨
    請求書に記載されている事項、提出された証拠書類及び陳述の内容から、請求の趣旨を次のように解した。
市長に対し、
  (1)全ての議員に対し、政務調査費の支出に係る領収書を提出させる。
  (2)全ての議員に対し、政務調査費の目的外使用分の返還を請求する。
  (3)全ての議員が政務調査費に関する領収書、調査報告書、視察報告書を公開することが望ましい旨の意見を表明する。
  (4)政務調査費の使途基準に禁止事項を明記し、交付の相手方を議員個人から会派に変更することが望ましい旨の意見を表明する。
   以上のことを求める。

 4 請求の理由
  (1)熊本市が、平成 17 年度政務調査費として議員に交付したものに、以下アからオまでの事実があるので、市長は、議員に領収書を提出させ、使途基準違反分の返還請求をしなければならない義務があるのにこれを怠っている。
  よって、これを改めるために請求の趣旨(1)及び(2)を求める。
  ア 熊本市は、平成 17 年度政務調査費として、議員一人当たり月額 20 万円、年間 240 万円、総額では 1 億 2,480 万円を支給している。これは公金の支出である。
  イ 熊本市議会政務調査費の交付に関する条例(以下「条例」という。)第 5条に「議員は、政務調査費を別に定める使途基準に従って使用するものとし、市政に関する調査研究に資するための必要な経費以外のものに充ててはならない。」とあるので、政務調査費の根幹は研究研修費であり、他の費目は調査研修に付随する費目であると解釈される。
  ところが、研究研修費が 0 円又は極めて小額であるのに、他の費目より支出されたものが 12 件あり、これは目的外使用に当たる。
  ウ 事務所費として支出した21件のうち、事務所所在地が確認できないもの、自宅や後援会事務所、選挙事務所等と兼用と思われるもの、事務所費としては高額すぎるものがあり、これらは不適当な支出である。
  エ 資料作成費、調査旅費及び人件費の支出にも、その内訳が不明で高額すぎるものがあり理解しがたい。
  オ 市長には、政務調査費を支出した当事者として、議員に領収書等の提出を命じる権限があると思うので、領収書等の提出を求め、目的外に使用された政務調査費の返還を求めるべきである。
  (2)市長には、政務調査費の透明性を確保するため、「政務調査費支出に関する領収書、調査報告書、視察報告書を公開すること」、「政務調査費の使途基準に関して禁止項目を明記すること」、「支給方法を議員個人から会派に変更すること」を意見表明して欲しい。

 5 監査対象事項
  請求書に記載されている事項及び事実を証する書面から監査の対象事項を次のとおりとした。
   (1)政務調査費交付制度について
   (2)交付事務の実際について
   (3)目的外使用の有無について
   (4)議員の保管する領収書についての市長の提出命令義務及び議員の目的外使用分に対する市長の返還請求義務の有無について
   (5)市長の意見表明義務の有無について

 6 請求人の証拠の提出及び陳述
  請求人に対し、法第 242 条第 6 項の規定に基づき、平成 19 年 3 月 16 日に証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
  なお、請求時及び陳述時に提出された証拠書類は次のとおりである。
  @平成 17 年度政務調査費収支報告書の写(議員 52 人分)
  A事務所・自宅の写真 (6 点 )
  B資料( A4 版 1 枚)
  C政務調査費【事務所費】( A4 版 1 枚)
  D新聞記事
   平成 19 年 2 月 13 日及び同 2 月 16 日時事通信、同 2 月 18 日毎日新聞、
   同 2 月 18 日読売新聞、同 2 月 9 日共同通信、
   同 1 月 23 日及び同 2 月 1 日朝日新聞、
   同 2 月 10 日、同 2 月 23 日及び同 3 月 15 日熊日新聞、
   同 3 月 11 日琉球新聞、平成 18 年 11 月 7 日神戸新聞、
   同 8 月 12 日山陰中央新報

 7 関係職員の事情聴取等
  関係職員に対し、法第 199 条第 8 項の規定に基づき、平成 19 年 3 月 16 日に事情聴取を行うとともに、監査の対象とした事項について関係書類の提出を求め精査した。
  なお、事情聴取を行った関係職員及び提出された関係書類は次のとおりである。
  (1)関係職員
     議会事務局長、議会事務局次長、議会事務局総務課長
  (2)関係書類
    @政務調査費交付条例制定の経緯
    A政務調査費の交付の流れ
    B請求人の主張について
    C政務調査費の取扱いについて
    D政務調査費の使途についての主要会派協議事項
    E交付決定、交付請求及び収支報告書に係る関係書類一式
  以上によって監査を行った結果は、次のとおりである。

第3 監査の結果
   1 主文
     請求書の趣旨(1)及び(2)の請求は理由がないものとして棄却し、その余の請求は不適法として却下する。
   2 事実関係
(1)政務調査費交付制度について
  ア 政務調査費については、平成 12 年 5 月に地方自治法の一部改正が行われ、「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。」(法第 100 条第 13 項)こと、また「政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。」(同条第 14 項)ことが定められ、平成 13 年 4 月 1 日から施行された。
 なお、改正の趣旨については、「地方議会の活性化を図るためには、その審議能力を強化していくことが必要不可欠であり、地方議会の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要になっている。」(第 147 回通常国会 衆議院地方行政委員会 会議録)と述べられている。    イ この地方自治法の改正をうけ、熊本市においても、全国市議会議長会の標準条例・規則案を基に、条例及び「熊本市議会政務調査費の交付に関する条例施行規則」(以下「施行規則」という。)を制定し、平成 13 年 4 月 1 日より施行した。
  なお、当初は会派に対して交付されていたが、条例改正がなされ、平成 16 年 4 月 1 日から議員個人への交付に変更された。
  ウ 条例第 3 条第 1 項は「政務調査費は、各月 1 日に在職する議員に対し、月額 200,000 円を一会計年度の半期ごとに交付する。」と規定し、同条第 2 項は「政務調査費は、各半期の最初の月に、当該半期に属する月数分を交付する。ただし、半期の途中において議員の任期が満了する場合は、任期満了日の属する月までの月数分を交付する。」と規定している。
  エ 条例第 5 条は「議員は、政務調査費を別に定める使途基準に従って使用するものとし、市政に関する調査研究に資するための必要な経費以外のものに充ててはならない。」と規定し、施行規則第 5 条は「条例第 5 条に規定する政務調査費の使途基準は、別表に定めるとおりとする。」と規定している。      別表には、以下のとおり政務調査費の使途として 9 項目が示されている。

項目

内容

研究研修費

議員が、研究会、研修会等を開催するため、又は他の団体の開催する研究会、研修会等に参加するために要する会場費、講師謝金、出席者負担金、会費、交通費、旅費、宿泊費等の経費

調査旅費

議員の行う調査研究活動のために必要な先進地調査又は現地調査に要する交通費、旅費、宿泊費等の経費

資料作成費

議員の行う調査研究活動のために必要な資料の作成に要する印刷製本代、翻訳料、事務機器購入費、リース代等の経費

資料購入費

議員の行う調査研究活動のために必要な図書、資料等の購入に要する経費

広報費

議員の調査研究活動、議会活動及び市の政策について市民に報告し、広報するために要する広報紙及び報告書の印刷費、送料、会場費等の経費

広聴費

議員が市民からの市政及会派の政策等に対する要望及び意見を吸収するための会議等に要する会場費、印刷費、茶菓子代等の経費

人件費

議員の行う調査研究活動を補助する職員を雇用する経費

事務所費

議員の行う調査研究活動のために必要な事務所の設置、維持管理等に必要する賃貸料、維持管理費、備品購入費、リース代等の経費

その他の経費

その他の経費で議員の行う調査研究活動に必要な経費

  オ 条例第 6 条第 1 項は「政務調査費の交付を受けた議員は、政務調査費に係る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を作成し、議長に提出しなければならない。」、同条第 2 項は「前項の収支報告書は、前年度の交付に係る政務調査費について、毎年 4 月 30 日までに提出しなければならない。」、同条第 3 項は「政務調査費の交付を受けた議員が、議員でなくなったときは、前項の規定にかかわらず議員でなくなった日から 30 日以内に第 1 項の収支報告書を提出しなければならない。」と規定している。   また、施行規則第 6 条は「議長は、条例第 6 条の規定により提出された政務調査費収支報告書(様式第 6 号)の写しを市長に送付するものとする。」と規定している。
   カ 施行規則第 8 条第 1 項は「政務調査費の交付を受けた議員は、政務調査費の支出について支出伝票及び出張記録書を作成し、現金出納簿、当該議員名義の預金通帳を備えた会計帳簿等を調製するとともに、領収書等の証拠書類を整理しなければならない。」と規定し、同条第 2 項は「政務調査費の交付を受けた議員は、前項の証拠書類等について当該政務調査費に係る収支報告書の提出期限の日から起算して 5 年を経過する日まで保管しなければならない。」と規定している。
   その一方で、条例及び施行規則に、市長又は議長等に領収書等を提出すべき旨を規定した条項は存在しない。
  キ 条例第 7 条第 1 項は、市長は使わなかった政務調査費の返還を命じることができる旨規定するとともに、同条第 2 項は、市長は、議員が使途基準に違反した場合若しくは政務調査費について虚偽その他不正行為があったと認められる場合にはその全部又は一部の返還を命じることができる旨規定している。
  ク 以上、法、条例及び施行規則による熊本市の政務調査費の基本的扱いは、次のとおりである。
    (ア)政務調査費の交付は交付申請に基づき、半期毎に各半期の最初に議員個人に交付される。即ち事前の交付(支出)である。
   (イ)議員は使途基準に従いこれを使い、支出について支出伝票及び出張記録書を作成し、現金出納簿、当該議員名義の現金通帳を備えた会計帳簿等を調製するとともに、領収書等の証拠書類を整理し自ら保管する。
   (ウ)議員は収支報告書を議長に提出し、その写しは議長から市長に送付される。
   (エ)使途基準違反または不正行為があった場合、市長はその全部又は一部の返還を命じることができる。

(2)交付事務の実際について
  ア 予算措置について
    平成 17 年度第 1 回定例会において、平成 17 年度政務調査費として 1 億2,480 万円が予算計上され、議決されている。
  イ 交付申請について
    平成 17 年度の交付申請書等は、施行規則第 2 条の規定に基づき、 3 月下旬までに 52 人の全議員から議会事務局総務課に提出されている。
  ウ 交付申請書の内容審査や交付額の決定について
    提出された交付申請書等は、議会事務局総務課で記載内容の確認等の形式的な審査が行われ、平成 17 年 4 月 1 日付けで 1 億 2,480 万円の交付決定と支出負担行為の起案がなされている。
    また、実際の支出は、平成 17 年 4 月 8 日(上期分)と平成 17 年 10 月7 日(下期分)の2度に分けて、それぞれ 6,240 万円が振り込まれている。
  エ 収支報告書の提出について
    収支報告書は、条例第 6 条第 1 項及び第 2 項の規定に基づき、翌年度の4 月 30 日までに各議員より議長(議会事務局総務課)に提出されている。
  また、収支報告書の写しは、施行規則第 6 条の規定に基づき、平成 18年 6 月 1 日付けで市長(総務局総務部総務課)へ送付されている。
  オ 収支報告書の内容審査及び受理について
    提出された収支報告書は、議会事務局総務課において、記載内容及び計数等の形式的な審査がなされ、平成 18 年 5 月 22 日付けで受理の決裁がなされている。
  カ 政務調査費残余の返還届の提出について
    政務調査費返還届は、施行規則第 7 条の規定に基づき、平成 18 年 5 月 22 日に 12 人の議員から提出され、同日付で議会事務局総務課において記載内容を確認、受理の決裁がなされた後、平成 18 年 5 月 23 日に当該残余金として 3,628,353 円が戻入処理されている。

(3)目的外使用の有無について
   ア 議会事務局の説明について
    平成 19 年 3 月 16 日の関係職員事情聴取の結果、議会事務局は各議員に対し「政務調査費の取扱いについて」を配布して十分な事前説明を行っていること、また、議員らが取りまとめた「政務調査費の使途についての主要会派協議事項」が存在し、その内容は施行規則に定める使途基準を更に具体化したものであることが認められる。
   イ 関係書類の再点検について
     交付申請書、収支報告書等の記載内容及び計数等については、議会事務      局から提出された政務調査費の交付に関する下記の書類を、平成 19 年 3 月 19 日から同 3 月 30 日まで、監査事務局職員において再点検を行った結果、適正であると認められた。 
     @交付決定関係書類
      (政務調査費交付申請書、予算書、事業計画書、交付決定伺、政務調査費交付決定通知書、支出負担行為書)
     A交付請求関係書類
     (政務調査費交付請求書、振込依頼書、支出命令書)
     B収支報告関係書類
     (政務調査費収支報告書、政務調査費返還届、戻入伺)
  ウ 領収書等の閲覧又は写しの任意提供について
     関係法令、条例及び施行規則に、政務調査費に係る領収書等の提出を命ずる規定がないことから、平成 19 年 3 月 27 日に、議会事務局を経由して、各議員が保管する平成 17 年度政務調査費に係る会計帳簿等の閲覧又は写しの提供について任意の協力を依頼したが、「情報開示の対象文書になっていないこと」等の理由により、協力を得ることができなかった。

3 判断
  (1)始めに
    政務調査費は、使途基準を定めて交付され、基準に反して使途したものはこれを返還しなければならないことは当然であるが、他方、議員は地方自治の根幹をなす広範な政治活動の自由を有し、いかなる事項を対象に、いかなる態様で調査研究活動を行うかについては、基本的には各議員の良識に基づく判断に委ねられていると解せられる。
  それ故、議員は、その活動に要した支出について支出伝票及び出張記録書を作成し、現金出納簿、当該議員名義の預金通帳を備えた会計帳簿等を調製する等を要し、領収書等の証拠書類を整理し自らの責任で保管するものの、議長を通じて市長に提出する義務があるのは、その収支報告書のみである。
  ところで、条例第 7 条第 2 項は、使途基準違反または不正行為があった場合、市長はその全部叉は一部の返還を命じることができる旨規定している。
この規定は、上記制度の趣旨、帳簿類の自主保存義務、収支報告書のみの提出義務などを勘案すると、市長は、議長から交付された各議員の収支報告書を点検し、その記載のみから使途基準違反が疑われる場合は、更に調査して使途基準に合致しないものがあるときはこれの返還を求めなければならないが、特に疑われるものがない場合、これをしなければならない義務まではない趣旨と解すべきである。
   (2)そこで、以下各議員の提出した収支報告書から使途違反が疑われるものが存在するか否かを検討する。
   ア 研究研修費について
 請求人が、政務調査費は先ず研究研修費に充てられ、その他の費目は調査研修に付随する場合に限って使用すべきで、研究研修費が 0 円叉は小額の場合、その他の費目は政務調査費の目的外使用になると主張する点について検討する。
  そもそも、政務調査費は先ず研究研修費に充てられ、その他の費目は調査研修に付随する場合に限って使用すべきであるという旨を規定した関係法令、条例や施行規則は存在しない。
  また、条例第 5 条及び施行規則第 5 条に政務調査費の使途基準が規定され、その使途項目が広範囲にわたっているが、それは上記で述べたとおり、議員にある程度の自主的な判断と広範な裁量が認められているためであると考えられる。
  してみると、政務調査費の支出形態は様々であり、研究研修費という支出科目は、その他の支出科目と同列のその一つにすぎないといわざるを得ず、研究研修費の支出がなされていない、あるいは小額だということをもってのみ、政務調査費の目的外使用にあたるという請求人の主張は理由がない。

   イ 事務所費について
  請求人が、事務所所在地が確認できないもの、自宅や後援会事務所、選挙事務所等と兼用と思われるもの、事務所費としては高額すぎるものがあり、これらは不適当な支出であると主張する点については検討する。
  収支報告書には、事務所費として「事務所賃貸料」等これに類する記載があるものが 21 件存在する。この記載は他人に対価を払ってこれを事務所として使用している趣旨であるが、対象事務所の所在、所有者、賃料月額等の記載はない。
  議会事務局から聴取したところによると、議員は、連絡先の届出義務はあるが、政務調査のための事務所の届出義務はなく、また、事務所を 1 箇所に限定する規程は存在しないこと、事務局においては、個別の議員が自宅と別に政務調査費のための事務所を開設しているか否か、その事務所は自己所有物であるか否かなどは把握していないこと、自宅に対する事務所賃貸料は不適切であり、また、後援会活動や選挙活動には支出できないことを各議員には事前に十分説明していることが認められる。
  してみると、このことと領収書等による確認ができないことを併せ判断すると、市長(議会事務局総務課)においては、事務所費の科目に事務所賃料あるいはそれに類する記載があるものについて、自宅の有無にかかわらず政務調査のための事務所を他人から借り受けて記載の対価を払っているものと信頼するしかなく、また、各議員提出の事務所費に関する記載自体からは使途違反が疑われるものは存在しない。

 ウ 資料作成費、調査旅費及び人件費について
  請求人が、資料作成費、調査旅費及び人件費が高額であると主張するので、この点について検討する。 これらの費目については大部分の議員が計上しているが、その額は議員間では金額に相当のばらつきがある。そして、収支報告書の備考欄の記載は、人件費について例示すると、「事務員給与」、「補助員経費」等とのみ記載され、人数、月額等の記載がなく概括的である。他の費目についても、例えば「現地調査のための交通費」等と記載され、行き先、月日等の記載がないものが多くみられ、これまた概括的である。総じて、この備考欄の記載自体は概括的で不十分であることは否めないところである。
  しかしながら、これらの費目に限らず、政務調査費の使途基準に示されている費目に金額の差異が生じるのは、これらの積算根拠となる内容の如何によるところが大きく、これは各議員の政務調査活動の目的や内容等にによって左右されるところであるが、政務調査費に占める割合や上限額を定めた規定は存在しない。
  してみると、この額に相当なばらつきがあることをもって、額の上位の議員について直ちに政務調査費の目的外使用があったと疑う理由はない。
  また、前記のように備考欄の記載が概括的であって、使途の繊細が不明であることは否めないが、さりとて、これらの記載自体から、前記使途基準違反があったと疑う理由はない。

 エ その他の費目について
  上記アからウまでに挙示した費目以外の費目について、収支報告書の記載自体からは、使途基準違反を疑わせるものは存在しない。

  (3)以上、全ての議員の平成 17 年度政務調査費については、収支報告書の記載自体から使途基準違反を疑わせるものは存在しないのであるから、これがあることを前提とする市長の領収書提出命令及び返還命令を発しないこと(怠る事実)をもって違法叉は不当と判断することはできない。
    なお、請求人は、市長に対し、請求の趣旨(3)及び(4)の意見表明を求めているが、これらはいずれも住民監査請求の対象とはならないので、請求自体不適法である。

 4 結論
   以上のとおり、平成 17 年度政務調査費について、議員に対し、市長が領収書を提出させ、かつ、目的外使用分の返還請求をしないことは、違法若しくは不当に怠る事実とはならないので、請求の趣旨(1)及び(2)の請求はこれを棄却し、その余の請求は請求自体不適法であるからこれを却下すべきものである。

 よって、主文のとおりとする。

第4 意見

 本請求に係る監査の結果は以上のとおりであるが、監査委員としては、法第 199 条第 10 項の規定に基づき、以下のとおり意見を述べておきたい。
 政務調査費については、地方議会の審議能力を強化しその活性化のため、議員の調査活動基盤の充実を図ることを目的として交付されるものであり、制度上、その使途及び金額の妥当性については議員自らの判断と責任に委ねられている。
 その一方で、「政務調査費については、情報公開を促進し、その使途の透明性の確保が求められていることから、例えば、政務調査費に係る収支及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすることを検討するなど透明性の確保に十分意を用いること。」(平成 12.5.31 、自治行第 32 号、行政課長通知)が強く求められている。
 ついては、市長(議会事務局)及び議会に対し次のとおり要望する。
   (1)市長(議会事務局)におかれては、公金の支出である政務調査費の所管部局として、議員の政務調査活動を制約しない範囲で、収支報告書など提出書類の摘要欄の記載を詳細にするなど、本制度運用の更なる充実に努められたい。
  (2)議会におかれては、平成 19 年第 1 回定例会において、「政務調査費を透明にするための請願」を継続審査とした経緯等を踏まえ、市民に対する説明責任の充実を図るため、積極的な検討、議論が行われるよう期待する。

  

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