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平成17年第2回定例会委員長報告質疑草稿(産院問題に関して)

一人会派『一歩の会』の廣瀬賜代です。

行財政改革のテーマとして取り上げられ、今回の総務委員会でも審議が行なわれました熊本市立産院の見直し問題につきまして、質疑をさせていただきます。

私は、幸山市長の市政改革に期待を寄せる一人として、微力ながらも改革の推進を支援する立場で議員活動をやってまいりました。

そしていまも、私の基本的な軸足は、『待ったなしの改革』が必要との思いから、あえて火中の栗を拾い上げていかれる幸山市長の施政方針を援護する立場から動いてはおりません。

しかし、このたびの市立参院の見直し案につきましては、残念ながら市長のご判断は誤っているとの結論に達しまして、軌道修正を願うために、本日こうして登壇させていただきました。

以下のお尋ねは市長に対する質疑として申し述べさせていただきますので、よろしくご答弁のほどをお願いいたします。

お尋ねいたしたい要点は、産院の見直し案の中で言われております、産院の分娩機能を廃止しても市民病院および民間医療機関での代替が可能であるので問題はない、という点についての疑問ですが、本題に入ります前に、まずは私が市立産院の分娩機能の存続にこだわる理由をご説明する必要があるかと思います。

私が注目しておりますのは、熊本市立産院がWHOユニセフによる『赤ちゃんにやさしい病院』の認定を得ているという点です。

WHOの世界基準によります『赤ちゃんにやさしい病院』の主たる認定条件は、母乳育児の実践と推進の努力であることは、市長もご存じのとおりです。その根底にあるのは、『哺乳動物の一員である人類にとっては、お母さんの胸に抱かれ、おっぱいを吸って育つことが、あらゆる意味で万全の育児方法である』ことの科学的な証明がなされ、世界レベルの周産期医療研究者たちが、『母親となった女性が生来の能力として与えられている、おっぱいの分泌をはじめとする「育児力」を最大限に生かすことが、産み出された赤ちゃんの心身ともに健全な成長にとって、また母子の幸福にとっても、もっとも有効である』との確信を得ていることです。

そうした研究成果を全世界の一人ひとりの赤ちゃんの幸せに結び付けていくために、WHOは『赤ちゃんにやさしい病院』認定制度を作り、世界的な母乳育児の推進を図っています。

さて母乳育児と申しますと、栄養や免疫物質の受け渡しといった物理的機能が取りざたされることがほとんどですが、じつはそれだけが値打ちではない『おっぱい育児』の大切さというのを、私は産院問題について勉強する中で学びました。

お母さんが赤ちゃんを愛しいと感じる母性を獲得するのは、おっぱいを吸わせることによって分泌されるプロダクチンというホルモン、これは『子育てホルモン』と呼ばれるそうですが、このホルモンの働きによるということをご存知でしょうか。つまり、自分が産んだ子どもを可愛いと思えずに育児放棄や虐待に走ってしまう、いまや社会問題となっている気の毒な母親たちを減らすには、『せっせとおっぱいを吸わせる子育て』の啓発と推進を行なうことが有効な手段となるわけです。

また赤ちゃんの側から言えば、生まれてすぐにお母さんの胸に抱っこされ、おっぱいに触れることができるカンガルーケアは、狭い産道を命がけでくぐり抜けてきたことで味わった恐怖感や、温かい子宮の中から見ず知らずの外界に誕生した不安感を癒し、人格形成の第一歩を、守られ癒される安心感から始めることができるといわれます。こうした人生の第一歩を経験できた赤ちゃんは、生まれ出た直後に母親から引き離されて清潔な新生児ベッドに収納され、退院までの多くの時間を、聞きなれたお母さんの鼓動もなければ肌のぬくもりもない孤独感の中で過ごした赤ちゃんと比べると、のちのちの自己肯定感の醸成などの面でかなりの差がありましょう。

『赤ちゃんにやさしい病院』が標榜するのは、その名のとおり、赤ちゃんの身になった出生直後ケアや育児方法です。そしてそれは同時に、自然が与えてくれたシステムによって母性を豊かに育み、母子のゆるぎない絆を作りもする子育て法として、お母さんにも、またお父さんや家族にも幸せな結果をもたらします。

私は、一人でも多くのお母さんが『赤ちゃんにやさしい』出産と育児を選択され、幸福な母と子が数多く生まれることを希求します。そして、それを支える『赤ちゃんにやさしい病院』がもつ今日的・社会的な意義への理解が深まりますことを、せつに願うものです。

ご説明が長くなりましたが、私がなぜ産院の現状維持にこだわるのか、多少ともおわかりいただけたでしょうか。

さて、こうしたいわゆる母乳育児の推進は、じつは昭和五十年代の当初から『母乳運動』という形で行なわれていたのですが、残念ながら私は、その恩恵には浴せませんでした。

私事で恐縮ですが、私は昭和五十三年に第一子である長女を市内の民間産科医院で出産し、五十六年に次女を、また五十八年に長男と三女を双子として出産いたしましたが、いずれの場合も母乳育児についての指導ないしケアは不十分で、新生児期から混合栄養での育児を余儀なくされました。また知識としては耳にし希望もしていた、出生直後からの母子同床という願いもかないませんでした。

すなわち、すでに『赤ちゃんにやさしい』育児方の提起は為されていた時期にもかかわらず、当時の一般的な産科医院の実態は、そうした最先端の研究を反映させたものにはなっていなかったということです。

そしてそうした状況は、残念ながら現在も大きく改善されてはいないらしいことは、9割のお母さんたちが母乳育児を理想としながらも、一ヶ月検診のときにはすでに5割をわっているという調査からも推測できます。また、こうした落差が発生する大きな原因は、産科医師や助産師による指導やケアのまずさにあると、聖マリア病院・母子総合医療センター長の橋本武夫先生は断言されています。

ここからが本題ですが、熊本市では、行税制改革の観点から取り組む市立産院見直し案の中で、産院の分娩機能を市民病院産科に統合することとし、事実上、産院は廃止する一方で、まちづくり戦略計画の柱の一つである「日本一子育てしやすいまちづくり」の実現のため、『赤ちゃんにやさしい分娩』は広めていくとされています。

ところが私には、現在WHO認定『赤ちゃんにやさしい病院』として早産予防や母乳育児の推進に大きな実績を上げている産院を、いまの時点で解体してしまうことは、この『日本一子育てしやすいまちづくり』に逆行する結果をもたらすとしか思えないのです。

当局では、市立産院が年間約300組にしか提供できていない高度な周産期母子サポートの技術を、年間7000組の熊本市内での出産すべてに行きわたらせるためと説明されます。

ですが、予定どおり来年四月に産院の機能解体が行なわれた場合、いま市立産院が実施している妊娠中から産後育児に至るまでの総合的なケアと同レベルの母子サポートが、他の医療機関によって間違いなく代替されるという保証は、どこにあるのでしょうか。

たとえば現在、市内の複数の産科医療機関が『赤ちゃんにやさしい病院』の認定を受ける準備を進めていて、来年4月までに受け皿の確保が見込まれるといった状況にあるならば、「民間代替可能」とする当局の主張も飲み込めますが、そう言った事実はあるのでしょうか? 市当局が産科医療機関に対して行なったアンケートの結果は、「ゆくゆくは取り組みたいと考えている」といった消極的な回答がせいぜいだったというふうに理解しておりますが、いかがでしょうか。

さらに申しあげますと、産院の分娩機能が吸収統合される予定の市民病院産科を視察させていただいた折に、「産院がいま取り扱っている年間300組のお産が、産院とおなじ『赤ちゃんにやさしい病院』を選択した結果として、全数市民病院に移行してきた場合、受け入れは可能ですか」とお尋ねしたところ、お答えはいただけませんでした。

こうしたことからしますと、市がご予定の市立産院見直し案では、私たち市民は単に、『赤ちゃんにやさしい病院』での出産のチャンスを、市立産院の分だけ失うのみ、ということになりはしませんか?

私は、市立産院が提供しているすぐれた周産期医療は、市民の財産として大切に保証した上で、早期早産の増加や産後ウツや育児困難などの現代的な課題に取り組む体制を拡充することが、いま求められている行政改革ではないかと考えますし、そのためのやりくりをつけることにこそ英知を注いでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

いまの産院見直し案は、せっかく持っているよいものをわざわざ捨てて、ないものねだりに期待をかけようとする、愚かな選択としか思えないのですが、市長のお考えをお聞かせください。

見直し案によりますと、新生児期母子サポートセンターのスタッフは、9名が予定されているだけです。 

現在、保健福祉センターの地域健康係63名に助産士会からの応援も受けて行なっている訪問ケアが、市内で年間7000組ほど生まれる新生児期母子の5〜6割しかカバーできていないのを改善したいということですが、63名プラスアルファでも6割しかカバーできないものを、たった9人の増員で100パーセントに持っていけるとするのは、小学生でもわかる計算違いのように思いますが、いかがでしょうか。

しかもその事業の予算は、市立産院の昨年度の赤字分とほぼ同額の9000万円というのでは、行財政改革としての実効はないということになってしまうように思えますが、いかがでしょうか。

私の疑問が解消しますような明快なるご答弁をお願いいたします。

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