ひろせ賜代ホームページ
文書棚
産院‐市政だより8月号の特集記事について

熊本市長 幸山政史様

市政だより8月号の特集記事

『なぜ市立産院の見直しをするの?』に抗議します    2005 ・ 8 ・ 1

    熊本市議会議員 上野美恵子・北口和皇・廣瀬賜代・益田牧子

『市政だより』8月号に3ページにわたって掲載されている、市立産院の見直し案を紹介した特集記事は、市民を誤解させ判断を誤らせる部分が多々あり、まことに遺憾ですので抗議します。

 私たちがもっとも遺憾に思います点は、この特集記事が全体として、市立産院の廃止統合や、(仮称)新生児期母子サポートセンターの設置が、あたかもすでに決定した事項であるかのような印象を与えることです。

 産院の見直しについては、6月議会での保健福祉委員長報告のなかで「(前略)今後さらに議論を深めていくべき点が多く残されているので、執行部においても廃止条例を九月議会に提出することに固執することなく、柔軟かつ慎重な検討を求めることで取りまとめた次第であります」と報告されています。この保健福祉委員長の取りまとめは、産院存廃問題を議論している最中である議会の意思を代表するものであり、むろん市の見直し案は現段階では議会の議決を得てもいません。

すなわち特集記事の内容は、執行部の見直し『案』の説明として、いまだ『案』の段階であることを明瞭にした書き方がされる必要がありました。

 しかし実際の記事にはそうした明記がなく、むしろ市民に産院の廃止は決定事項であるように誤解させることを意図して書かれているように見えます。

市内に全戸配布される『市政だより』は、市民の政策判断に与える影響が大きく、そのぶん市民のための正確・公正な情報発信であるべきものです。それを、行政当局の恣意的な世論操作の具にしたと非難されても当然の今回の特集記事には、強く遺憾の意を表せざるを得ません。

 また個々の記事の内容についても、事実の曲解や、誤解につながるごまかしや詭弁が多く見られます。特集記事に散見する、事実を誤認させ市民の判断を誤らせる恐れがある記述を、以下いくつか具体的に申し述べます。

市政だより4ページ目の『お産をめぐる本市の現状と課題』という部分では、熊本市の早期新生児死亡率・新生児死亡率の高さを訴えて「高度な医療体制を強化することが緊急の課題」と主張されていますが、その前に、NICUでのケアを必要とするよう極小未熟児が生まれてしまう早期早産そのものを予防する取り組みが、あってしかるべきでしょう。

市立産院は、この早産予防というテーマにしっかりと取り組んで、市内でのベスト施設と言ってもいい目覚しい成果を挙げていますが、『予防』という語の記述がない当記事では、産院のそうした取り組みは無視された恰好です。

さらに「市民アンケート調査、産科医療機関の実態調査結果を踏まえ市立産院の見直しを行なうことにしました」との文言からは、市民や民間産科医療機関からの声に基づいて、今回の見直し案が作られたように読み取れます。

しかし実際には、市の具体的な見直し案つまり産院廃止の方針が打ち出されてすぐに、『産院の存続を求めるおかあさんの会』からかつてない 4 万人という驚くべき数の反対署名が提出され、また現在私たちが行なっている署名活動でもすでに二万六千人の声が集まっています。さらに民間産科医療機関の 8 割は産院の存続を求めている旨の陳情も提出されています。

ところが今回の特集記事では、それらの廃止反対の声には一切触れることなく、市にとって都合のいいことのみが書かれています。

またQ&Aの二点目、「市立産院以外の産科医療機関では、現在産院が行っている母乳育児や母子同室などの『赤ちゃんにやさしい医療』は行ってないの?」というQに対するA「96%の施設が母乳育児を推奨・支援している(要約)」は、市が民間産院に対して行なった聞き取り調査の結果を資料としているそうですが、市がべつに行なった母親に対する母乳育児についての聞き取り調査の結果(母乳率は平均54.7%、また医療機関別の統計では母乳率7%〜100%という大きなバラツキがある)から類推される実態とは乖離した内容であり、信頼に値しないと言うほかありません。

さらに、Q中に使われている『赤ちゃんにやさしい医療』という文言は、WHOユニセフが、産後一ヶ月の母乳率95%以上などの非常にきびしい条件付きで認定する『赤ちゃんにやさしい病院』をイメージさせるものであり、実態が伴わない場面でキャッチフレーズ的に安易に用いてよい言葉ではありません。

ことにここでは、市内のどの産科医療機関でもWHO認定『赤ちゃんにやさしい病院』と同等のケアが受けられるかのような、誤解を誘導しかねない使われ方をしており、たいへん問題です。

また市政だより5ページ目の『市立産院の見直しに対する施策展開の基本方針について』で謳われている三点の強化と充実、あるいは拡大の構想は、 6 月議会保健福祉委員長報告の産院問題についての取りまとめの中で、「その現況としては産院で培ってきたものを民間産科医療に広げるという面で緒についた段階であり、具体的な展開方策等については、今後さらに議論を深めていくべき点が多く残されている」と表明されている部分に当たり、また私たちの予測によれば実現の可能性には大いに疑問がある、いわば市の希望的『机上の空論』を述べたものです。 

このような、現段階では絵に描いた餅にすぎないものを、まるですぐに実現可能な施策であるかのように市民に売り込むことは、詐欺に等しいと言わざるを得ません。

さらには『見直し』というソフトな言葉面を利用しつつも、当初から廃止以外の選択肢については言及もせずに『見直し=廃止統合』という一点に絞って検討を進め、それへの議会や市民からの「待った」の声にも耳を貸さずに今回のような発表をされた市の態度は、議会軽視、市民無視との非難に値します。

少子化の進行がとどまらない中、産後ウツや乳幼児虐待の原因となる育児困難を抱えた母親は、増加の一途をたどっているという現状を真摯に受け止めるならば、市執行部は、そうした母子の危機的状況を打開するために提唱されている、WHO認定『赤ちゃんにやさしい病院』である市立産院の存在意義を、評価せざるを得ないはずです。

かねてより公的産院の役割はすでに終わったとの見解もあるようですが、市立熊本産院に関しては、WHO基準による『赤ちゃんにやさしい病院』の認定を取ることで、将来的にも充分な存続価値を獲得してます。

私たちは、熊本県内の周産期母子医療全体を見渡しての結論として、市立産院については、市民病院産科の連携施設としての拡充の方策が取られるべきと信じています。

こうした議論も含めて、私たちは冷静で建設的な話し合いを望んでいますが、このたびの出来事はそうした意味でも許しがたい、執行部の不当な権力行使であり、強く抗議いたします。

産院の地元である向山校区自治会連合会においても、今回の特集記事については不快の声が多く上がっていると聞き及んでおります。

今回の産院見直しに関する特集記事で、市の公式な広報誌にあるまじき詭弁に満ちた欺瞞的な記事立てを行い、市民に誤解を与えたことについて、市は猛省をもって陳謝し、こうした市民を欺く情報操作は二度と行わないことを誓ってください。

同時に、この産院見直し問題については、多くの市民からも議会からも、慎重な検討を求められている案件であることを認識していただき、廃止の結論ありきでつじつま合わせを行なうのではない、真に真剣な検討を要請します。

ページの先頭へ


戻る
 
トップページへ